第0話「光」

 

目を覚ませば反転していた世界が元の世界に戻る。
十年前のあの日から俺はベイブレードに触れなくなった。
あの日から外の光を一度も浴びていない。
父が持ち帰ってきた大きな模型が窓の光を遮っている。

ドンッドンッ

いつものだ。

「速斗…?起きてる?お昼、ドアの前に置いておくからね」

母さんには、悪いと思ってる。
十年間ずっと守ってもらっている。

きっと辛いのは母さんの方だ。
母一人手でここまで来た。
弱音を吐かずに一人で頑張ってくれていた。
そんな母の顔もあの日以来見れていない。
俺にたった一つの勇気があれば、あと一歩あれば…。

『次のニュースです。ベイブレード公式運営企業のwbba.が先日に株式会社LORDに買収されました。』

LORD…?
父が勤務していた大企業だ。
世界各国を周り財宝を持ち帰り、それを資金にして様々なサービスを提供する企業である。


「wbba.をねぇ…。」
母が作ってくれた蕎麦を啜りながら長方形の液晶画面を睨みつける。
十年前のあの日、父の上司が家に来た。
「少し遅れた誕生日プレゼント」だと渡されたのが白と金色のベイブレードだった。

まるで、父の形見のようだった。
あの日から俺はベイブレードを拒絶し、ベイブレードを拒み始めた。

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昼飯を食べてから何時間経っただろうか…?
いつものようにネットサーフインを続けていると時間の流れが分からなくなる。

ピロンッ

滅多にならないスマートフォンから一通の通知音が鳴る。

「メールか…?」

そこに書かれていたのは、思いもよらないことだった。

『お前の父は生きている。』

送り主はLORDのCEOだった。

 

「父さんが…生きてる…だと…。」

確かにLORDの方針上行き先は例え家族でも社内機密になっていた。
探すにも探すことは出来ない。
もし、父さんが生きているとしたら…。

自分の中の何かが動き出した。
鎖で絡まっていた永い永い時間が動き始めた気がした。

メールに示されていた言葉。


ベイブレードで勝ち抜け』

 

俺の失っていた10年間は戻ってはこない。
だけど、進めることはできる。
あの日から止まっていた時間を少しずつ進めることは出来る。

俺は大型のリュックに荷物を積め、部屋を出る。

「速斗…?」

目の前には昼飯の食器を持った母さんが立っていた。
その姿は十年前とは違って、シワも増え、白髪も目立っていた。

俺はその場で立ち崩れてしまう。

「やっと、進もうと決めたんだね。」

母さんが優しく声を掛ける。

「母さん、俺。ずっと…」

あまりの豹変した姿の裏腹に変わらない暖かさに包まれ涙が止まらない。

「ううん。いいの。速斗がそうやって、前に進んでくれたんだもの。」

「俺、世界一になる。父さんを連れて戻ってくる…。絶対…絶対…!」

伝えたい言葉は沢山あった。
なのに、出てこない。

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それから、二日ほど過ぎた。

 

「それじゃあ、俺行くよ。」

母から貰った新品の服とリュックを背負って玄関に立つ。

「うん。行ってらっしゃい。気をつけてね。」

「うん。行ってくる。」

言葉はあまり交わさなかった。
父と共に帰ってきて沢山話をしたいからだ。

俺は白と緑の禍々しいベイブレードをポケットに入れ、ベイブレードジムを目指して進む。
太陽が道を照らしている。
そんなような気がした。

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初めましてYolunoと申します。

二次創作小説 ベイブレードバーストSONIC 第0話「光」

どうでしたでしょうか?

戦闘シーンが無いため、僕の語彙力皆無文をこのあとがきまでお付き合いして頂けているだけでも幸いです。

次回の第1話では、初の戦闘シーンが描かれます。

ベイブレードという「駒」をどう文字で再現するのか?必見です。

第1話の更新は8月21日です!(はやい!)

まだまだクオリティは低いですが、これからよろしくお願い致します。