第1話「剣」

この世界には、勝者と敗者の二つに別れる。
敗北が許されないこの時代では、たった一つのミスも許されない

 

「ここがベイブレーダー強化ジムか」

 

メールに示されていた通り、俺は行方不明の父さんの真相を知るために世界一にならなければいけない。

中に入ってみると、二十人程のブレーダーがトレーニング器具やベイバトルをしている

 

「君はもしかして、音無君の息子かね?」

 

ジムの風景を見ていると、小太りの髭を生やした男に声をかけられた

 

「そうですが、父をご存知で?」

 

「うむ。ここのジムはLORDの協力もあって設立できたジムだからな」

 

LORDはこんなことまでやっていたのか
正直、ここまで大きな会社だとは思ってもいなかった

 

「おっと申し遅れたね。私はこのジムのオーナーの『黒井』だ」

 

「俺は『音無速斗』です。早速ですが、このジムで一番強いブレーダーに挑みに来ました」

 

ここまで来たら引く訳にはいかない。
この世界ではブレーダーランクの高いブレーダーを倒すことでランクが上がり、『アルティメットトーナメント』への出場権を得ることが出来る。
今の段階では俺は一番低いEランクだ。
少しでも強い相手と戦い経験値を積まなければならないのだ

 

「もしや、道場破りかい?良い意気込みだ。それじゃあ、その探している『化け物』を呼んでこよう。奥のスタジアムで待っててくれ」

 

そう言ってオーナーは室内のエスカレーターに乗って二階へと向かっていった。

しばらくすると黒いバンダナを首に巻いた小型の少年が現れた

 

「キミが道場破りの人?」

 

そう言って口に入れていたキャンディを突き出してきた。

 

「あぁ。俺の名前は『音無速斗』だ」

 

「ボクは『印藤子影』。そしてこれがボクのベイ『バイパーヒュドラ』」

 

(ヒュドラということはディフェンスタイプか…。タイプ相性なら確実に不利だ。)

 

確かに、『基本的』にはタイプ相性で圧倒的不利である。

 

「分かった。俺はこの『ソニックガブリエル』でいく」

 

「おっけぇ。じゃ、始めよっか 」

 

互いのベイをチェックし、スタジアムに構える

 

「それでは、ランクアップを掛けたランクバトルを始めます。先に2ポイントを取った者の勝利。Bランクの子影選手に勝利すると、音無選手はDランクへの昇格を認められます」

 

そう。この世界では勝てば勝つほど強くなれる。
父さんが残したこのベイと俺が一から作り上げたこのドライバーで…

 

「レディーセット!」

 

ギャラリーの声と共にカウントが始まる。

 

「まずはお前からだ。印藤子影…!!」

 

「「GO!シュート!!」」

 

勢いよくスタジアムにベイが放たれた。

 

ヒュドラ!センターを取れ!」

 

ヒュドラが放たれた直後センターへ向けて回り出した

 

「弾け!ガブリエル!」

 

ガブリエルが猛スピードでヒュドラに当たりに行く

 

「効かないよ。バイパースネーク!」

 

うねった蛇型刃がガブリエルの攻撃を受け流している。
それに加えてマッシブドライバーが弾かれないようにヒュドラを強く支えている

 

「ガブリエル!!」

 

「今だヒュドラ!バイパーカウンター。」

 

うねった蛇型刃がガブリエルを弾き返した。

 

(あのうねった蛇型刃が受け流しと違ったカウンター性能を出せるとは…)

 

「まだだっ…!!ガブリエル!」

 

弾かれてスタジアムの壁に衝突したガブリエルのオリハルコンウィングがスタジアムの壁を蹴り飛ばす

 

「俺が最強になるっ!『ウィングクラッシュ』!!」

 

「ひ、ヒュドラ!『バイパーカウンター』!」

 

うねった蛇型刃がガブリエルのオリハルコンウイングを受け止めようとするが…

 

ヒュドラ!!」

 

ヒュドラがスタジアムの壁にめり込んだ

 

「このまま突き刺せ!『オリハルコンソード』!!」

 

二本の剣が壁にめり込んだヒュドラに目掛けて飛んでくる

 

『パワー3!』

 

「なんだ今の?!」

 

エンジンドライバーのアシスト音声と共にギャラリーがザワついた。
そう、この自作ドライバーの『エンジンドライバー』は3つのスピードに変更できる。
『超加速』のモード1。
『微加速』のモード2。
そして…

 

「『再加速』した…だと…」

 

そう、第3のモード『再加速』

 

「バーストフィニッシュ!ポイント0ー2で勝者『音無速斗』の勝利!」

 

『『うおおおおおおお』』

 

ギャラリーは歓声で溢れていた。

 

「このボクが負けるなんて…。」

 

あまりの衝撃に印藤はついていけず、その場で崩れ落ちた


「審判、これでランクアップだろ?」

 

そんな印藤を無視して審判にブレーダーカードを突き出す。

このやり取りを見ていた黒井が近づいてきた

 

「お見事。さすが音無君の息子だね」

 

「どうも、ありがとうございます。もうこのジムには用はないので失礼します」

 

そう一言残すと、黒井は

 

「君の父は全国大会の運営をしている」

 

「それは本当か?!」


この黒井という男は父と関係性が深いのかもしれない